PHEV ブログ

アウトランダーPHEV(2013年新発売時 初号機)乗りのブログです

「大三菱を捨て小三菱を取ることが三菱健全化の近道」 を読んで

日経ビジネスに早稲田大学大学院の長内厚教授が寄稿している
長文ですが、良くまとまった文なので略さず紹介します。




 再びの三菱自動車(以下三菱自)による不正。今回も自浄作用は働かず、
軽自動車のOEM供給先の日産自動車からの指摘で表面化した。
またしても三菱自の対応は後手に回り、いよいよ日産傘下に入ることが決まった。

 2000年以降の2度の不祥事、そして今回の性能偽装と名門三菱ブランドは地に落ちた。
三菱自のクルマ、特に軽自動車の販売台数は今後大きく減少するだろう。元々、三菱自が
自社向けに生産していた軽自動車は今回問題になった2車種併せても17万台に届いていない。
これは十分に開発費を回収できる台数とは言えず、日産向けOEM供給の方が約3倍の数を販
売しており、三菱自の軽自動車工場はざっくりいえば、ラインに流れてくるクルマの4台に3台は
日産ブランドと言うことだ。

 三菱自単独で軽自動車のラインを維持することは不可能であった一方で、日産自動車も自動車の
販売台数の内訳の約15%を軽自動車が占めているが、軽自動車の自社開発は行わず、
三菱自とスズキから調達を行っていた。特に三菱自から調達していた2モデルは主力車種であり、
この穴を埋めるのは難しい。
 仮に自社開発に切替えるにしても、軽自動車開発の経験もノウハウもない日産が新規に、
自社モデルを開発するとすれば数年の開発期間を要するはずで、その間売るクルマがない
という状況になってしまうことを考えれば、嫌でも三菱自のリソースを使わざるを得ない。
 そう考えれば両者の利害は一致しており、遅かれ早かれ三菱自の少なくとも軽自動車部門は、
日産が傘下に収めるのが順当であったと言えよう。
日産 ゴーン 三菱不正 会見

家電はともかく自動車は中華圏に売ってはいけない
 いずれにしても、ルノー系とはいえ、日本の日産の手がさしのべられたのは最悪の
中の最善策であった。
 デジタル化によってすりあわせ型から組み合わせ型の産業に移行し、国際的な分業と中国、
台湾を中心とした東アジア地域にものづくりの拠点が移ってしまった家電業界については、もはや、
日本企業だけで垂直統合モデルを堅持したとしても時代錯誤の大艦巨砲主義でしかない。
むしろ、東アジアの分業型産業の中に飛び込んで、その中で日本にしか作れないモノを
作ることが必要だ。
一例を挙げれば、iPhoneはアメリカで企画し、台湾で設計、中国で製造を行っているが、
iPhone生産の分業の中には未だに日本の部品や設備が欠かせない。
三洋やシャープの中華圏企業への売却にしても、戦略的に考えれば日本にまだ勝ち目が残っている。
サンヨー シャープ

 一方、自動車産業は、家電よりも複雑で多数の部品を必要とし、高度な調整やノウハウを要する、
すりあわせ型の典型的な産業だ。その中核技術である内燃機関の技術が、今回の三菱自の自滅によって
中華圏に流れることは避けられた。
 これは日本の国際競争力維持に重要なことである。そもそも、北米で日本のコンパクトカーを
脅かしている韓国現代自動車にしても、元々は三菱自からの技術供与によって自動車開発の技術と
ノウハウを得ており、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関を開発する能力は
日本のお家芸と言ってもいい。


 電気自動車がガソリン車に代わる未来のクルマだ、というのは技術的にも日本のビジネスにとっても
良い話とは言えない。内燃機関のエネルギー効率は電気自動車よりもいい。電気自動車がクリーンだと
いうのはクルマ単体でしか見ていない話であり、その電力を作るための環境負荷を考えれば必ずしも
エコロジーな動力源ではないし、電気自動車に使われる高価で大量のリチウムイオン電池には寿命があり
定期的に多額のメンテナンスコストを支払って交換する必要がある。
 また、ベンチャーの米テスラモータースが急成長したように、
電気自動車は日本でなくても造れてしまう製品であり、内燃機関を捨て電気自動車に
移行することは、日本の産業を「ビジネス」という観点で捉えても
望ましくない。トヨタやホンダがハイブリッド車の開発に注力したのも、
エンジンに電気を組み合わせて新しいモノを作ったように見えていて、
その実、ハイブリッドエンジンという形で内燃機関を残し、
模倣困難性を維持したことの方がビジネス的な意味は大きい。
トヨタ HVエンジン

 つまり、技術的にもビジネス的にも日本にとって内燃機関を動力源としたクルマは大切に育て売って
いかなければならない。そうした内燃機関の信頼を損ねるような今回の燃費偽装は、
三菱だけの問題でなく自動車産業全体に対して大きな悪影響があることであり、その罪は大きい。

 今回の燃費不正は、現行制度であるJC08モードでも未だに実走燃費との乖離が大きく、
ウソをついても気づかれにくいという制度設計の不備もある。
JC08は以前の10・15モードよりより実際の燃費に近づけたもの
であるが、それでも実際にユーザーが運転をしてたたき出せる燃費ではなかったことが、
ウソの燃費表記の発見が遅れた遠因になっている。

 しかし、もちろんのこと最も悪いのは三菱自自身である。
JC08モードの燃費測定精度は業界の健全な
成長のために性善説に立って設計されたものであり、自ら産業を破壊するようなモラルの低下、
順法精神のなさはメーカーの名に値しない。
三菱燃費不正 2016

 「トップはどこまで知っていたか」という議論も起きているが、これは全く無意味である。
原因はモラルやコンプライアンスの低い企業文化を作り放置したマネジメントに責任があるのであって、
会長以下経営陣が最も責を負わなければならないことである。更にいえば、現場の士気、モラル、
コンプライアンス意識の低下は、トップマネジメントの机上の開発戦略によって
もたらされたものであり、開発現場への注意を払っていれば、
これまでの三菱自再建の中で防げたかもしれない。



 繰り返しになるが、三菱自は、乗用車シェア約2%の小規模メーカーである。
しかも、度重なる不祥事で、ブランドイメージが失墜している。
しかし、三菱自の開発商品を見ると、軽自動車、SUVに加え、
コアコンピタンス(中核能力)の全く異なる電気自動車まで、自前でやってきた。
まるで大手メーカーの開発戦略である。

 三菱自の2倍のシェアを持つマツダやスバルでさえ、中小自動車メーカーとして、普通乗用車の
内燃機関の開発に特化し、それぞれ欧米で高い評価を受けている(マツダは軽自動車の販売は
行っているがOEM調達によるものであり、自社開発は行っていない)。規模が小さいのであれば、
身の丈に合わせたニッチ戦略を採るべきであろうし、三菱自の開発費では、そもそもこれだけの
開発プロジェクトを回すことは不可能だ。
マツダ スバル

 限られた開発資源の中でこれだけ無理な開発プロジェクトを押しつけられたら開発現場の士気は
下がるだろうし、それでもなんとかしなければならないという焦りがモラルやコンプライアンス意識を
吹き飛ばしてしまったのではないだろうか。誤解がないようにもう少し説明すると、
車種のラインアップをある程度持つことは悪いことではない。
しかし、開発資源が限られているときは、コアコンピタンスに特化し、
それを横展開してラインアップを拡充すべきなのである。自動車業界らしくいえば、競争力のある
親モデルを開発し、そこから派生モデルを増やしていくという手法だ。

 しかし、三菱自は、コアコンピタンスを深掘りした上での横展開ではなく、軽自動車、普通乗用車、
電気自動車というそれぞれ異なる技術開発プロジェクトを並行していた。
そこが、総花的ということなのである。
会社の規模を考えずに、大手と同じような開発戦略を押しつける。
問題は、「大三菱」の看板にあるのではないだろうか。

 ちなみに三菱の乗用車のラインアップにはディグニティとプラウディアという高級セダンがある。
多くの乗用車のラインアップを削り、軽自動車とSUVをメインとしているなかで、
非常に違和感のあるラインアップであるし、町中で見かけることもほとんどない
。これらは日産の高級セダン、シーマとフーガのOEMであるが、まるで、三菱グループの役員車、
社有車としてスリーダイヤモンドをつけるだけのために存在しているかのようだ。
こうした大三菱グループの意識を捨てなければ、実態として小規模メーカーである
三菱自の再建はままならない。
三菱ディグニティ プラウディア

 1990年代以降、三菱といえば、パリ-ダカールラリーのパジェロや世界ラリー選手権
(WRC)のランサーエボリューションなど、ラリーに強い、
高い技術力を持った会社のイメージであった。しかし、
競技分野は不要なコストとして切り捨てられ、マニアックな人気のあった
ランサーエボリューションも市場から姿を消した。
三菱自は、軽自動車や電気自動車よりも、こうした何があっても三菱ブランドに
ついてきてくれるニッチでコアな客をもっと大切にすべきだったのではないだろうか。
アジアクロスカントリーラリー2015のアウトランダーPHEV

 また、今回の日産による買収を三菱自はアライアンスと呼んでいるが、
現実から目をそらすべきではない。
つぶれかけの小規模自動車メーカーが救済合併されようとしているのである。
いつまでも大三菱グループのブランドへの郷愁を持ち続けたままでは、
この先も問題を起こし続ける
可能性は消えないのではないだろうか。

 軽自動車も引き続き共同開発ということだが、この先、誰が三菱の軽自動車を買うのだろう。
これまでもほとんど日産のための軽自動車ビジネスであったことから目をそらしてはいけない。
日産傘下の三菱自の軽自動車部門は、日産ブランドの軽自動車のための工場に特化しては
どうだろうか。また、優位性のない電気自動車開発からは即刻手を引くべきである。

 そのためには販売網の整理も必要かもしれないが、日産販売店への転換という道もあるかも
しれない。いずれにしても、他社よりも極めて大きなマイナスのブランドイメージがつきまとう会社が、
他社と同じ土俵で戦うのは戦略的に得策でない。

 では、三菱ブランドの自動車はどうすべきなのか。
 東南アジアなど、同社のブランドイメージや商品(SUV)が強い地域は
そのままビジネスを継続できるだろう。
国内に関しては、かつてのラリーに強い三菱というニッチでコアな
マニア向けのブランドになる手がある。
競技分野への復活は、士気の低下した開発現場の再建にもプラスになる。
大三菱を捨て小三菱を取ることが
三菱自の健全化の最も近道であろう。
アウトランダーPHEVオーストラリアラリー

 また、小三菱化にはもうひとつの意味がある。大三菱の看板を下げることで、
自らの奢りや過去の企業文化を捨てることが必要だからだ。
かつての名門通信機器メーカー「トリオ」は経営難に陥って、
当時の通産省から経営立て直しのために社長が派遣されたが、
彼がまずしたことは、名門「トリオ」の社名・ブランドを捨て「ケンウッド」に統一し、
過去の栄光にとりつかれていた社員の意識改革をするところからであった。

 三菱自も現実を直視するところからしか再建はあり得ない。



電気自動車に関するくだりだけは、同意しかねる部分こそあれ、
(日本企業、三菱共に勝ち目はあると思うので、単独かは別ですが
やっていくべきと思います)概ね的を得た寄稿です。
特にこうなったら「ラリーやPHEVを強みにしたキーンな企業」に
「それでもついてきてくれるファンを大事にする会社」に
なるべきなのかもしれません。
WBS 新型アウトランダーPHEV

相川さんは「電動×SUV」でやっていく
「切り捨てることで際立てる」と言っていただけに、
実は日産三菱になってこの方針になったら
技術者として適任だったのかもしれません。
「カッコイイ存在感のある小三菱」への復活を期待したいです。


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コメント


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Re: 2014 PHEV owner さんへ


>三菱から少しづつ軽の生産をなくすのは資本の(売却と)集中ですから
三菱は元気になれますね。工場の固定資産税だけでも大きな支出ですよ。

そうですね! 自力で軽をやらなくなると電動車両に集中できるかも
しれませんね!

gieron | URL | 2016-05-27(Fri)01:18 [編集]


色んな見方がありますね。

三菱ロゴにこだわったからの結果という印象が読んで強かったですね。

いろんな意見がありますね。

1つのケーキをどうやって切ってみるか。一つの軸に何億とおりの切り方。

身の丈に合った...
三菱ロゴの為に..

ここはちょっと待ってよ、と思いました。あったことだけを振り返ってみてみるとまた違う見方があります。

三菱自動車はそんなに開発費かけずにPHEVを他のグループ企業と打ち出してきて大きなリターンと単価性(軽は1台のPHEVを何台売れば同じ元が取れるのであろうか)そして技術者やディーラーのやる気を0円で引き出しました。PHEV自体もトヨタやホンダの車産業技術のように衝撃をこれからもづっと与えていますよ。だって世界のメーカーがPHEVを向いているじゃないですか。

今の三菱自動車には"いくらよ!高いわよ!”といった資産価値をべたっと付けてみると信じられない値段の人材価値があるということですね。

軽は続けられない市場がこれから何年もあるとされていますから、三菱から少しづつ軽の生産をなくすのは資本の(売却と)集中ですから三菱は元気になれますね。工場の固定資産税だけでも大きな支出ですよ。

経営陣、組織や開発等の部の監督責任者、当事者はあったこと、したこと、結果として起こり得ることを顧みなかった点に関しては失格ですし、当事者と監督責任者は何が理由であれ組織にいることは拒否されるべきです。私どもユーザーの大切なディーラーすべての人が一番納得いかないでしょう。彼らの資金はどこから来ているのですか?

何の個人経営でも似たようなことはいつども起こりえます。不幸中の幸いといった、いろんな中身の話は日常のようにリーマンショック時代からずっと中小経営者等関係者の口から出てきてます。

彼らにとって今回のスケール(大きさ、反響)はケタ違いですが、三菱ロゴがといったような理由でとはあったことを振り返ると見受けなかった印象はあります。

"他社よりも極めて大きなマイナスのブランドイメージがつきまとう会社が、他社と同じ土俵で戦うのは戦略的に得策でない”

私はここの意味はさっぱり分かりませんね。

色んな見方っていっぱいいろんな考えをさせてくれますね。ふむむ。

2014 PHEV owner | URL | 2016-05-23(Mon)13:29 [編集]