
日経ビジネスの
日産三菱特集はさすがの深い内容です。
読みごたえがありました。
一部を紹介します。
「砂上の楼閣」とも言える三菱自動車に、日産はなぜ2373億円も投じるのか。

まず、ゴーン社長が手にしたスリーダイヤの“印籠”。これが最も効果を発揮するのは東南アジアの市場だ。三菱自動車の海外販売を担う三菱商事の協力を得られれば、日産の東南アジアでの存在感は一気に高まる。非資源事業の強化を目指す三菱商事にとっても渡りに船だ。三菱自動車の益子会長は「(グループ3社の中で日産に)興味があるとしたら、三菱商事かもしれない」と指摘する。
技術面でも“買い得”との判断が働いた。日産の技術系幹部は「何と言ってもPHVのノウハウが手に入るのが一番だ」と声を弾ませる。三菱自動車が2013年に発売したPHV「アウトランダーPHEV」の累計販売台数は10万台を超えている。「これほど多くの車が異常なく走っていること自体が大きな価値だ」(日産幹部)。

日産はEV(電気自動車)のリーディングカンパニーとしての地歩を固めたが、充電インフラの不足という課題に直面している。一方、モーターとエンジンを併用して走るPHVは電池切れの心配が小さい。富士経済が昨年発表したEVの世界市場予測では、2035年は2014年比24倍の463万台。PHVは同51倍の611万台で、より急速な市場拡大が見込める。
ゴーン社長は2011年、4年後にPHVに参入すると表明。EV技術を流用し投資効率を高める計画だった。しかし、いまだ具体的な商品計画を発表していない。「アウトランダーに(日産製EVの)リーフの電池を載せた車をすぐにでも作りたい」と日産幹部は話す。

5月25日、三菱自動車の副社長への就任が内定した日産の山下光彦・技術顧問は「(三菱自動車は)二十数年前、SUVの性能、機能で先端を走っていた頃の自信を取り戻してほしい」と語った。山下氏は日産のナンバー2、西川廣人CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)や志賀俊之副会長と同年代。ゴーン社長のやり方をよく知る腹心が、三菱自動車の風土改革とシナジー効果の拡大を託された。

相川社長、中尾龍吾副社長が辞任を表明した直後の5月20日、益子会長は全社員にメールを送った。「日産との提携後もグループ3社の支援は続く。安心してほしい」──。
外部の救世主を迎えても、なお抜けない三菱村への依存心。三菱自動車の「三つ子の魂」を打ち砕かなければ、ゴーン社長が数十億ドルとうそぶく提携効果も画餅となる。そしてPART 2で見るように、新しい形の再編の波が広がる中では、三菱を救った日産ですら安泰とは言えないのだ。

相関図からは、仏ルノー・日産自動車の連合が突出して国際色豊かであることが分かる。2010年に両社は独ダイムラーと提携。日産「スカイライン」にダイムラーのブランドであるメルセデス・ベンツのエンジンを搭載して話題を呼んだ。エンジンは自動車メーカーにとって「心臓」とも言える。コスト削減のために聖域を設けない大胆な提携戦略を進めている。2014年にはロシアのアフトワズの経営権も取得。ここに三菱自動車が加われば、国境を越えた改革がさらに進展すると考えられる。
これに対して、同国企業同士の連携を着々と進めているのがトヨタ自動車だ。富士重工業に加えて昨年、マツダと包括提携を締結。今年1月にはダイハツ工業の完全子会社化を発表して「オールジャパン」の装いを強くした。

いまだここから漏れているのがホンダとスズキ。ホンダは富士重やマツダのような強烈な個性を手にしないまま、我が道をひた走る。スズキは昨年、独フォルクスワーゲンとの提携を解消。今年に入ってトヨタとの提携が噂されるも、中ぶらりんの状態が続く。
環境規制の強化から技術面での協業も活発だ。トヨタは技術面では国境を越えることをいとわず、米フォードや独BMWと組んでいる。
日産はなぜ規模を追うのか──。
本誌は経営コンサルティング会社アーサー・D・リトル・ジャパンと共同で、主な自動車メーカーの収益性と規模の相関関係を分析した。下の図は横軸に世界販売台数を、縦軸に営業利益率を取り、それぞれ2015年度と2005年度の数字を分布させたものだ。
(*上に戻って相関図の下に付いてます)
浮かび上がったのは、世界シェアで首位を争う「1000万台クラブ」と、特定の市場や分野に特化し、小規模ながら収益性を高めている「200万台クラブ」の2極化が進んでいる実態だ。
前者はトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)。後者は富士重工業やマツダ、独BMWなど。財務体質の改善のためにマツダなどとの資本提携を解消した米フォード・モーターや、中国など新興国市場で急成長した韓国・現代自動車を除けば、中規模メーカーの利益率は低迷している。
日産はそこから抜け出し、仏ルノーとの連合で1000万台クラブに入ろうと、三菱自動車を傘下に入れた。電撃提携はこう捉えられる。

90年代は「400万台クラブ」
なぜ、1000万台なのか。独ダイムラーと米クライスラーの統合やルノーによる日産への出資などグローバルな再編劇が次々に起こった1990年代には、「400万台クラブ」が生き残る条件と言われた。
ボーダーラインが上がった理由は明白だ。90年に4300万台だった世界販売台数は、2015年に9000万台を突破したとみられる。先進国市場の成長が鈍化し、それまで1割未満だった新興国の比率が過半となった。
ただ、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、南米などの成長市場でシェアを伸ばすのは簡単ではない。それぞれ市場の特性や環境規制が異なるため、モデル数やエンジンの種類が増え、開発投資が膨らむ。
全方位的な技術開発を進められるのは「1000万台クラブ」のみ。複数ブランドでフルラインアップの商品を持ち、規模の力で開発や生産の合理化を進める。それができる企業だけが世界シェアを伸ばし、特定の市場の変動にも耐えられる安定した収益体質を得られる。

トヨタの2017年3月期のグループ販売台数目標は1015万台。豊田章男社長はこれまで「規模を追うことはしない」と繰り返してきた。その一方で、マツダとの業務提携やダイハツ工業の完全子会社化など、他社との連携強化にも積極的に動いている。
パワートレーンは環境規制の強化が引き金となって電動化へシフト。トヨタは2050年までに内燃機関だけで走るクルマをゼロにすると表明した。
EV(電気自動車)に載る電池やモーターは、従来の自動車部品に比べ、「規模の経済」が働きやすい。1000万台は世界シェア8~10%程度を意味する。スマートフォンでは韓国のサムスン電子と米アップルが、テレビではサムスンと韓国LG電子が、それぞれシェア8~25%程度で世界の「覇者」となった。クルマはエレクトロニクス産業ほど寡占が進みにくかったが、これからは違う。

今年3月、米テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は壇上で「ついに最終段階だ」と誇らしげに語った。同社初の大量生産EV「モデル3」。発表から3週間で、40万台近くの予約が入った。これは、日産のEV「リーフ」が5年間で積み上げてきた台数よりも多い。テスラはパナソニックと合弁で、巨大電池工場「ギガファクトリー」を建設中。EVの主役を虎視眈々と狙う。
一方の「200万台クラブ」は、領域を絞り付加価値を高める戦略を進める。富士重の衝突軽減ブレーキ「アイサイト」やマツダのクリーンディーゼル技術、BMWやメルセデス・ベンツなどのブランド力がそれだ。

ただし、「各地域に限定したモデルを出さずに、単一ラインアップで販売できる限界は200万台程度」(アーサー・D・リトル・ジャパンの鈴木裕人氏)。自動運転やクルマの電動化などの分野を単独で開発することは難しく、規模の大きな他社に頼らざるを得ない。不正問題があったとはいえ、アジアで販売を伸ばしていた三菱自動車が日産の傘下に入ったのもそのためだ。
三菱も真面目にやっていれば、200万台クラブ狙いのポジションには
入れたのかもしれません。
こうなったら1000万台クラブの中で、独自のクルマを作るブランドとして
存在感を発揮して欲しいです。
日産三菱特集はさすがの深い内容です。
読みごたえがありました。
一部を紹介します。
「砂上の楼閣」とも言える三菱自動車に、日産はなぜ2373億円も投じるのか。

まず、ゴーン社長が手にしたスリーダイヤの“印籠”。これが最も効果を発揮するのは東南アジアの市場だ。三菱自動車の海外販売を担う三菱商事の協力を得られれば、日産の東南アジアでの存在感は一気に高まる。非資源事業の強化を目指す三菱商事にとっても渡りに船だ。三菱自動車の益子会長は「(グループ3社の中で日産に)興味があるとしたら、三菱商事かもしれない」と指摘する。
技術面でも“買い得”との判断が働いた。日産の技術系幹部は「何と言ってもPHVのノウハウが手に入るのが一番だ」と声を弾ませる。三菱自動車が2013年に発売したPHV「アウトランダーPHEV」の累計販売台数は10万台を超えている。「これほど多くの車が異常なく走っていること自体が大きな価値だ」(日産幹部)。

日産はEV(電気自動車)のリーディングカンパニーとしての地歩を固めたが、充電インフラの不足という課題に直面している。一方、モーターとエンジンを併用して走るPHVは電池切れの心配が小さい。富士経済が昨年発表したEVの世界市場予測では、2035年は2014年比24倍の463万台。PHVは同51倍の611万台で、より急速な市場拡大が見込める。
ゴーン社長は2011年、4年後にPHVに参入すると表明。EV技術を流用し投資効率を高める計画だった。しかし、いまだ具体的な商品計画を発表していない。「アウトランダーに(日産製EVの)リーフの電池を載せた車をすぐにでも作りたい」と日産幹部は話す。

5月25日、三菱自動車の副社長への就任が内定した日産の山下光彦・技術顧問は「(三菱自動車は)二十数年前、SUVの性能、機能で先端を走っていた頃の自信を取り戻してほしい」と語った。山下氏は日産のナンバー2、西川廣人CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)や志賀俊之副会長と同年代。ゴーン社長のやり方をよく知る腹心が、三菱自動車の風土改革とシナジー効果の拡大を託された。

相川社長、中尾龍吾副社長が辞任を表明した直後の5月20日、益子会長は全社員にメールを送った。「日産との提携後もグループ3社の支援は続く。安心してほしい」──。
外部の救世主を迎えても、なお抜けない三菱村への依存心。三菱自動車の「三つ子の魂」を打ち砕かなければ、ゴーン社長が数十億ドルとうそぶく提携効果も画餅となる。そしてPART 2で見るように、新しい形の再編の波が広がる中では、三菱を救った日産ですら安泰とは言えないのだ。

相関図からは、仏ルノー・日産自動車の連合が突出して国際色豊かであることが分かる。2010年に両社は独ダイムラーと提携。日産「スカイライン」にダイムラーのブランドであるメルセデス・ベンツのエンジンを搭載して話題を呼んだ。エンジンは自動車メーカーにとって「心臓」とも言える。コスト削減のために聖域を設けない大胆な提携戦略を進めている。2014年にはロシアのアフトワズの経営権も取得。ここに三菱自動車が加われば、国境を越えた改革がさらに進展すると考えられる。
これに対して、同国企業同士の連携を着々と進めているのがトヨタ自動車だ。富士重工業に加えて昨年、マツダと包括提携を締結。今年1月にはダイハツ工業の完全子会社化を発表して「オールジャパン」の装いを強くした。

いまだここから漏れているのがホンダとスズキ。ホンダは富士重やマツダのような強烈な個性を手にしないまま、我が道をひた走る。スズキは昨年、独フォルクスワーゲンとの提携を解消。今年に入ってトヨタとの提携が噂されるも、中ぶらりんの状態が続く。
環境規制の強化から技術面での協業も活発だ。トヨタは技術面では国境を越えることをいとわず、米フォードや独BMWと組んでいる。
日産はなぜ規模を追うのか──。
本誌は経営コンサルティング会社アーサー・D・リトル・ジャパンと共同で、主な自動車メーカーの収益性と規模の相関関係を分析した。下の図は横軸に世界販売台数を、縦軸に営業利益率を取り、それぞれ2015年度と2005年度の数字を分布させたものだ。
(*上に戻って相関図の下に付いてます)
浮かび上がったのは、世界シェアで首位を争う「1000万台クラブ」と、特定の市場や分野に特化し、小規模ながら収益性を高めている「200万台クラブ」の2極化が進んでいる実態だ。
前者はトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)。後者は富士重工業やマツダ、独BMWなど。財務体質の改善のためにマツダなどとの資本提携を解消した米フォード・モーターや、中国など新興国市場で急成長した韓国・現代自動車を除けば、中規模メーカーの利益率は低迷している。
日産はそこから抜け出し、仏ルノーとの連合で1000万台クラブに入ろうと、三菱自動車を傘下に入れた。電撃提携はこう捉えられる。

90年代は「400万台クラブ」
なぜ、1000万台なのか。独ダイムラーと米クライスラーの統合やルノーによる日産への出資などグローバルな再編劇が次々に起こった1990年代には、「400万台クラブ」が生き残る条件と言われた。
ボーダーラインが上がった理由は明白だ。90年に4300万台だった世界販売台数は、2015年に9000万台を突破したとみられる。先進国市場の成長が鈍化し、それまで1割未満だった新興国の比率が過半となった。
ただ、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、南米などの成長市場でシェアを伸ばすのは簡単ではない。それぞれ市場の特性や環境規制が異なるため、モデル数やエンジンの種類が増え、開発投資が膨らむ。
全方位的な技術開発を進められるのは「1000万台クラブ」のみ。複数ブランドでフルラインアップの商品を持ち、規模の力で開発や生産の合理化を進める。それができる企業だけが世界シェアを伸ばし、特定の市場の変動にも耐えられる安定した収益体質を得られる。

トヨタの2017年3月期のグループ販売台数目標は1015万台。豊田章男社長はこれまで「規模を追うことはしない」と繰り返してきた。その一方で、マツダとの業務提携やダイハツ工業の完全子会社化など、他社との連携強化にも積極的に動いている。
パワートレーンは環境規制の強化が引き金となって電動化へシフト。トヨタは2050年までに内燃機関だけで走るクルマをゼロにすると表明した。
EV(電気自動車)に載る電池やモーターは、従来の自動車部品に比べ、「規模の経済」が働きやすい。1000万台は世界シェア8~10%程度を意味する。スマートフォンでは韓国のサムスン電子と米アップルが、テレビではサムスンと韓国LG電子が、それぞれシェア8~25%程度で世界の「覇者」となった。クルマはエレクトロニクス産業ほど寡占が進みにくかったが、これからは違う。

今年3月、米テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は壇上で「ついに最終段階だ」と誇らしげに語った。同社初の大量生産EV「モデル3」。発表から3週間で、40万台近くの予約が入った。これは、日産のEV「リーフ」が5年間で積み上げてきた台数よりも多い。テスラはパナソニックと合弁で、巨大電池工場「ギガファクトリー」を建設中。EVの主役を虎視眈々と狙う。
一方の「200万台クラブ」は、領域を絞り付加価値を高める戦略を進める。富士重の衝突軽減ブレーキ「アイサイト」やマツダのクリーンディーゼル技術、BMWやメルセデス・ベンツなどのブランド力がそれだ。

ただし、「各地域に限定したモデルを出さずに、単一ラインアップで販売できる限界は200万台程度」(アーサー・D・リトル・ジャパンの鈴木裕人氏)。自動運転やクルマの電動化などの分野を単独で開発することは難しく、規模の大きな他社に頼らざるを得ない。不正問題があったとはいえ、アジアで販売を伸ばしていた三菱自動車が日産の傘下に入ったのもそのためだ。
三菱も真面目にやっていれば、200万台クラブ狙いのポジションには
入れたのかもしれません。
こうなったら1000万台クラブの中で、独自のクルマを作るブランドとして
存在感を発揮して欲しいです。
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