PHEV ブログ

アウトランダーPHEV(2013年新発売時 初号機)乗りのブログです

自動運転車  最新事情② 「チームドイツ(アウディ、メルセデス他)」

今後のクルマ業界の運命を左右するともいえる
自動運転技術」についての
日経ビジネスの丁寧な取材の2報目
(詳しくは本誌を・・・)



■アウディ、ダイムラー、ボッシュ、コンチネンタル…。
開発の最前線をドイツで徹底取材した。
ある時は「個」で、ある時は「チームドイツ」で──。自動運転でも覇権を握るべく突き進んでいる。


自動運転車 事情チームドイツ
独アウディの試作車「ジャック」。アウトバーンに乗り自動運転モードに切り替わってから記者は一度もハンドルを握らなかった

 ドイツ・インゴルシュタットにあるアウディ本社。自動運転開発の担当エンジニアが示した資料には、太い1本の線が引かれていた。自動運転の「レベル2」と「レベル3」を明確に区別するこの線は、自動運転でも安全性を第一優先とするアウディの流儀を示すものだ。

 同社は、人が常時、運転状況を監視するレベル2までの機能に、「パイロット=操縦」という名称を使わない。あくまで「アシスト=補助」する機能だという認識だからだ。米テスラ・モーターズが「オートパイロット」、日産自動車が「プロパイロット」という名称で市販しているのとは対照的だ。

■2017年に「レベル3」を市販

 「報道で『パイロット』と見るたびにまたかと思う。自動運転に対する消費者の誤解を生んでいる」。アウディでブレーキ・ステアリング・運転支援システム開発の総責任者を務めるトーマス・ミュラー氏はこう言う。

 慎重さは、自信の裏返しでもある。アウディは、自動運転と手動運転を切り替えられる「レベル3」の自動運転車を世界で初めて市販する自動車メーカーになる可能性が高い。2017年、高速道路上での交通渋滞時(時速60km以下)でレベル3の機能を搭載した旗艦車種「A8」を投入する予定。「市販するのは99.9999%の安全性を確認した時だけだ。時速60km以下については、その確認ができた」(ミュラー氏)。

 現在の法規では、レベル3でも走行中に運転者が読書をしたり映画を見たりといった行動は許されていない。ただしアウディによれば、車載ディスプレーなどクルマの機能に統合された端末を見ていれば、前方から視線を外しても問題ないという方向で米国、欧州の当局とは既に合意しているという。手動運転が必要になる緊急時には、映像などを切り替え、運転者に警告を与えることができるからだ。

 その安全性の検証に使っているのが、大型セダン「A7」をベースとした自動運転の研究車両「ジャック」だ。ジャックは昨年1月に米サンフランシスコ郊外からラスベガスまでの900kmを自動運転で走破。改良を重ね、今年5月から開始したアウトバーンでのテストでより“自然な”走行が可能になった。

 本誌は日本メディアとして初めて、ジャックを試乗した。運転席に座り、アウディ本社を出発。アウトバーン9号線に乗った。ハンドル脇のボタンを押すと、わずかだがハンドルと座席がぐぐっと動いた。自動運転モードの開始を知らせる合図だ。

 BMWの「PT1」と同じく、車線を認識し、自分が設定した速度で車線変更や追い抜きをクルマが完全に自動で進める。試乗した約20kmの道のりで、「ひやり」とした場面は一度もなかった。

■アウディがVWグループを主導

 自然な走行は、目の前の大型トラックを追い越すときに実感できた。センサーで大型トラックを認識すると、追い抜き車線に進路を変更する際、通常より膨らんだ進路を取ったのだ。安全に配慮した人間の運転と同じ振る舞いだ。

 同様に、車線変更時に後方にクルマがいれば、ウインカーを出した後で少しだけ幅寄せし、後方の安全性を確かめてから車線変更した。人間が、後方に変更の意図を伝える時に選択する操作と同じだ。

 「レベル3」を目指す試作車を走らせて既に約2年。アウディは単に機能の検証段階から、他の車両の迷惑にならないように走る段階に到達しつつある。「zFAS」と呼ぶ超小型コンピューターは米半導体大手エヌビディアのプロセッサーを搭載し、LIDARやレーダー、カメラから得た情報を瞬時に分析する。独自動車部品大手の幹部は「現在ではエヌビディアのプロセッサーが車載では断トツの能力だ」と話す。

 ジャックのカメラシステムは独ボッシュ、画像解析用チップはイスラエルのモービルアイ製だ。LIDARも欧州メーカーが提供している。アウディの開発エンジニアは「日本企業との提携はないが、アイシン精機とは議論している」と明かした。アウディもBMWと同様、自動運転車の開発で他社との提携を重視している。

 独フォルクスワーゲン(VW)グループにおいて、アウディはグループ全体の自動運転技術を主導するブランド。VWブランドが担当するのは自動駐車技術だけだ。アウディに技術を先行投入し、培った技術をグループ各社に順に展開する戦略だ。アウディとIT各社との協業は、VWグループ全体の自動運転技術を向上させる狙いもある。

■「自前主義」貫くダイムラー

自動運転車 事情チームドイツ

・自ら運営するシェアリングサービス「car2go」には「スマート」ブランドの車両を投入
・ハンドルもアクセルもないダイムラーのコンセプトカー「F015」。同社はシェアリングサービスで使うクルマに完全自動運転機能を搭載する戦略を進める
・ダイムラーの自動運転のキーマン、クリストフ・ヴォン・フーゴ氏


 BMWやアウディが積極的に提携を続ける一方で、「メルセデス・ベンツ」ブランドを擁する独ダイムラーは「自前主義」を貫いている。

 背景にあるのは危機感だ。今やスマートフォンやパソコンの商品力は、半導体の性能やOS(基本ソフト)のバージョンで決まる。自動車メーカーの幹部に「クルマでも同じことが起こるのでは」と聞いても、決まって答えは「ノー」。「安全性に関する考え方がパソコンとクルマでは全く違う」「走る楽しさはなくならない」…。

 ダイムラーは違った。「(ハードウエアメーカーの力が急落することは)十分にあり得る。だからこそ我々はソフトウエアを自前で開発する。IT企業との協力もあり得るが、主導権を握るのは我々だ」。予防安全分野の上級マネジャー、クリストフ・ヴォン・フーゴ氏はこう言い切った。


 ダイムラーは2つのプランを持つ。「Aプラン」は所有を前提としたクルマが対象で、「(SAE=米自動車技術者協会の)レベル3の機能があれば十分。(無人運転を指す)レベル5はおろか4も目指す必要はない」(フーゴ氏)。

 「Bプラン」はシェアリングサービスを前提としたクルマで、無人運転を目指す。ダイムラーは、乗り捨て可能で時間課金によるシェアリングサービス「car2go」を自ら運営し、車両も供給している。そこに無人運転技術を加えることで、サービスの急拡大を狙う。「我々が目指すのはモビリティープロバイダー(移動体の供給者)だ」(フーゴ氏)と、自動車の“メーカー”にこだわらない姿勢を明確にしている。



 それぞれ考え方や戦略は違うが、ドイツの各社に共通するのは、自動運転を次の競争軸の本命と捉え、経営のかじを大きく切っている点だ。それは部品メーカーも同じだ。

自動運転車 事情チームドイツ
・今年3月に開いた2015年12月期決算説明会で事業戦略を語る独コンチネンタルのエルマー・デゲンハートCEO(最高経営責任者、左)
・米センサーメーカーからLIDAR(上の写真)部門を買収し、車載センサーを取りそろえたコンチネンタル。より幅広いニーズに応えられるようになった。買収戦略は同社のおはこだ

 エルマー・デゲンハートCEO(最高経営責任者)自ら「これからはソフトウエア」と明言し、自動運転事業の強化に向けて積極的な買収を仕掛ける独自動車部品大手コンチネンタル。昨年、フィンランドのIT大手、エレクトロビットの車載部門を買収し、ソフトウエア事業を強化したが、その買収攻勢は今年に入っても衰えていない。

 BMWやアウディの試作車にも搭載されている「LIDAR」。高い精度で周囲の環境を認識でき、レベル3以上を実現するに当たって多くの自動車メーカーが必須と考えているセンサーだ。

 数年前から買収や提携などでセンサー事業を強化する中、最後の1ピースがLIDARだった。

 今年3月、コンチネンタルは米センサーメーカーからLIDAR事業を買収すると発表。これにより、同社は世界有数のセンサーラインアップをそろえる企業となった。「(センサーの)ポートフォリオ拡充は自動運転の基礎。これからも投資は継続的に行う」とフランク・ヨーダン取締役は話す。






■ボッシュ、自動運転で省エネ

 買収攻勢によって、コンチネンタルに自動車部門売上高で肉薄される部品最大手ボッシュ。こちらも同様に、IT企業への進化を遂げつつある。その「奥の手」を現地で見た。

 ドイツ北部の街、ヒルデスハイム。ボッシュのソフトウエア部門の拠点で、記者はポルシェの「パナメーラ ハイブリッド」をベースとした試作車に乗った。ボッシュがコネクテッドカー(つながるクルマ)の標準にしようと画策するシステム「コネクテッドホライズン」を搭載する最新モデルだ。


自動運転車 事情チームドイツ

・クラウドにためられたカーブの曲率や道路勾配などのデータを基にアクセルやブレーキを自動で制御するボッシュの試作車
・ボッシュの「つながるクルマ」の試作車とボッシュ・ソフトテックのトーステン・ムラスコCEO(最高経営責任者)


 このシステムでは、クルマが走りながらセンサーで集めた情報をクラウドに送信し、リアルタイムの「生きた地図」を作る。その情報をクルマに戻せば、カーブの先の見えない場所の状況も、クルマが理解することができる。

 試作車はリアルタイムの通信ではなく、クラウド上の道路の勾配のデータを利用し、加減速を自動でコントロールする段階のもの。同乗すると、前方に下り坂があることを見越して、自動的に減速し、減速分のエネルギーを車載電池にためた。道路の状況に応じて走り方を最適化する、自動運転時代の省エネ技術だ。

 ボッシュの強みは、通信に必要な機器の高いシェアを持っていること。センサーやECU(電子制御ユニット)などの部品も関連するため、持ち前の事業領域の広さを自動運転時代の新たな強みとして発揮できる。



 コネクテッドホライズンを担当する子会社、ボッシュ・ソフトテックのトーステン・ムラスコCEOは「我々は総合的なクルマのコントロールを目指している。クラウドから制御までできるのはボッシュだけだ」と胸を張る。

 自動運転時代の到来を産業の大転換点と捉え、一気に針路を変えた自動車大国ドイツの巨人たち。高級車市場では激しく競い合う裏で、「チームドイツ」としての動きも目立ってきている。その象徴が、地図を巡る攻防だ。

 世界中で地図サービス事業を手掛ける独ヒア。高精度なデジタル地図は自動運転に必須だ。ヒアを傘下に抱えていたフィンランドのノキアが2014年末に売却を発表すると、多くのIT企業が触手を伸ばした。米ウーバー・テクノロジーズ、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム…。次々に“候補”が報道される中、2015年8月にヒアを射止めたのは、ダイムラー、BMW、アウディの独3社連合だった。

 「IT企業からの買収提案があったのは事実だ。我々にとってリスクだった。大手IT企業はデータを囲い込む。我々にとって重要なのは、データの使い方の決定権を手中に残しておくこと。それがヒアを買った理由の一つだ」。BMWのステファン・バズ上級副社長はこう明かす。3社はリスクを回避しようと、チームとして買収を提案したわけだ。

■ヒアの規格が世界標準に

 ヒアを独立した存在として残し、各社が共同で地図の情報基盤を利用する。その戦略は早速、結果を出しつつある。

 今年6月、ヒアはクルマがデータを送信する際の規格をERTICO(高度道路交通システムを推進する欧州の官民連携組織)に提出した。

 参加するのはダイムラーなどドイツの各自動車メーカーに加え、ボッシュ、コンチネンタルといった部品大手。アイシン・エィ・ダブリュ(AW)とパイオニアなどの日本企業も名を連ねた。この規格が、事実上の世界標準となる可能性が高い。

 BMWやメルセデス・ベンツに代表されるプレミアムブランドは高価格帯のため、最新技術を早い段階で投入できる優位性がある。そこで各社が切磋琢磨しながらいち早く実績を積み、一体となって規格やルールなどで標準化を進める。これこそがドイツの勝ちパターンだ。加えて、ボッシュやコンチネンタル、そしてヒアなど、長期的なシナリオに基づいてIT企業への変貌を遂げようとしている企業の厚みもある。

 ハードやソフト、さらにルール作りや標準化など産業としての総合力が問われる自動運転時代。産業構造が大きく変わる中、「チームドイツ」も大胆に戦略をシフトしながら、覇権を握ろうとしている。



独 コンチネンタル

→◻コンチネンタルとは?


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