
日産のアリアに関する記述が興味深いので
長文ですが全部紹介します。
日経XTECH掲載の鶴原吉郎氏のコラムです。
日産自動車のEV(電気自動車)「アリア」は、どうも運が悪いというか、気の毒な感じがする。新開発のEV専用プラットフォーム「CMF-EV」を採用した新世代EV第1弾であり、2010年に「リーフ」を発売した、EVではパイオニア的な存在である同社が、満を持して投入した商品だけに、もっと脚光を浴びてもいいはずなのだが、残念ながらそうなっていない。

1つの理由は発売時期だ。アリアのコンセプトカーは、2019年秋に開催された「東京モーターショー」で公開され、市販モデルはほぼそのコンセプトカーのデザインのまま、2020年7月に発表された。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大や、半導体をはじめとするサプライチェーンの混乱で、実際の販売は当初の予定より大幅にずれ込んだ。2022年1月に予約注文限定モデルが発売されたものの、最初の市販モデルである「B6」が発売されたのは、2022年の5月になってからのことである。

折しも、2022年5月は、トヨタ自動車が2021年10月に詳細を発表した同社初の量産EV「bZ4X」を発売した月である(ただ、その後bZ4Xはホイールハブボルトのリコールで一時販売停止に追い込まれた)。さらに言えば、2022年5月は、日本に12年ぶりに再上陸した韓国Hyundai Motor(現代自動車)が、最新のEV「IONIQ 5」を発売したタイミングでもある。本来なら日産アリアは競合メーカーに先んじて市場に投入されるはずだった。それが結局、競合メーカーとほぼ同時のスタートになってしまい、結果として競合車の中で埋没してしまった。

もう1つ間が悪かったのが、身内にアリアよりもずっと注目されるEVが登場したことだ。その身内とは、三菱自動車の「eKクロスEV」と一緒に「2022−2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた軽自動車EVの「サクラ」のことである。偶然か、必然か、サクラも2022年5月に発表と同時に受注を開始したのだが、その後、発売から4カ月半で3万3000台を受注する大ヒット車になった。
こう言っては何だが、サクラは軽自動車「デイズ」のプラットフォームをほぼ流用して開発された、派生モデル的な成り立ちのクルマである(プラットフォーム開発時にEV化を考慮していたとはいえ)。にもかかわらず、専用プラットフォームを採用したアリアが、主役の座を奪われた格好になってしまった。発表から発売まで間が空いてしまったためか、2022−2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーにはノミネートすらされなかった。
このように、いろいろなめぐり合わせに翻弄された感じがするアリアだが、クルマそのものは決して悪くない。ショールームなどで見た時にはそれほど特徴のあるデザインに感じなかったのだが、あるとき、屋外に置いてあるアリアを見かけて、思わず立ち止まってしまった。こんなプロポーションのクルマ、見たことない、と感じたからだ。競合するトヨタのbZ4Xが、デザインのテイストとしては同じクラスの「RAV4」に近く、エンジン車と比較してもそれほど違和感がないのに対し、アリアはエンジン車とは明らかに異なるプロポーションである。何が違うかといえば、フロントノーズが非常に短いのだ。
フロントのタイヤハウス周囲のガーニッシュはフロントドアの前端ぎりぎりのところにあるし、フロントのオーバーハングは、同じクラスのFF(前部エンジン・前輪駆動)のエンジン車より明らかに短い。つまり、フロントドアよりも前の長さが同じクラスのエンジン車よりもだいぶ短いのである。これは、エンジンルーム(モータールームと呼ぶべきかもしれないが)を短縮できるEVの特徴を生かした結果であり、実際、アリアは同クラスのSUV(多目的スポーツ車)「エクストレイル」より全長が65mm短いにもかかわらず、ホイールベースは逆に70mm長いのである。室内長も、アリアは2075mmで、エクストレイルの1980mm(仕様により1990mm)より95mmも長い。

つまり、アリアはEVならではの特性を生かして、全長の割に広い室内空間を実現しているのだが、短いフロントノーズが寸詰まりに見えないのは、アーチを描くようなキャビンの形状や、前後のウインドーの角度などのバランスが良いからだろう。また内装の質感も非常に高い。今回試乗したB6グレードの内装色は明るいグレーで、シートは合成皮革とスエードの組み合わせであり、インストルメントパネルやドア内張りにも合成皮革が広くあしらわれ、500万円を超えるクルマらしい質感を表現できている。このあたりは、最大の競合車種であるbZ4Xを上回っていると感じた。

また、木目のような模様の上に図形が浮かび上がるスイッチ類は、ナチュラルさとハイテクをうまく融合して表現しており、新しさを感じる。物理ボタンの数を絞り込み、すっきりとシンプルな仕上がりの内装である。また前席はセンターコンソールがなく、足元が広々としているし、後席もフロアとの段差は自然で、“体育座り”を強いられることはない。
走り出してみると、発進はEVらしく静かでスムーズだ。踏み込めばEVらしい加速が得られるが、ことさらに出足を強調するような演出はない。またステアリングを切っていたときの特性も穏やかで、クルマの性格には合っていると思うが、あまりスポーティーな感じはしない。乗り心地は基本的には快適なのだが、高速道路の少し大きめな段差を乗り越えるとやや鋭い突き上げが、特にリアサスペンション周りから伝わってくる。ボディー剛性は全体としては高いのだが、リア周りは少し改善の余地があるかもしれない。
このように、アリアの走行性能は競合他社と比べて決して劣るところはないし、デザインや質感では上回っていると思う。ただし、アリアの発売タイミングが遅れたことで、最も運が悪かったと思うのは、アリアが発売されてから2カ月後の2022年7月に、新型エクストレイルが発売されたことだ。

EVの静かでスムーズという特徴は、e-POWER仕様のみとなったエクストレイルでも得られるようになってしまったし、予約受注車ではないアリアには現在のところ前輪駆動仕様しかないのに対して、エクストレイルは四輪電動駆動制御システム「e-4ORCE」を備えるAWD(全輪駆動)仕様がある。このe-4ORCEは、本来ならアリアが先に採用するはずだったが、結果としてエクストレイルに先を越されてしまった。
このため、e-4ORCEが実現しているステアリング操作に対するすばやい身のこなしを、アリアは現在のところ実現できていない。本来ならEVの強みである全開加速も、前後にモーターを積むエクストレイルには譲る。つまり、アリアの発売が遅れている間に、同じ日産の中でエクストレイルという強力なライバルが登場してしまったのである。EVの充電の不便さと、エクストレイルよりもざっと150万円高い価格を考えると、アリアの立ち位置はなかなか難しくなってしまったというのが筆者の正直な感想である。
➡︎□元記事に
凄いクルマなのにタイミングが悪い、不運、そういうクルマってあるものです。
今回新型プリウスが、ものすごい話題になっているのに対して、
日産アリアのプロモーションは、ことごとく失敗したと言えるでしょう。
公開が早すぎて発売まで間が空き過ぎてしまったのも失敗の要因です。
ここは日産割り切って、このクルマのために開発したモーターや電動パーツを
次なるクルマに応用してアリアを踏み石に、良いクルマの開発に活かしてほしいです。

➡︎□祝 日産サクラ三菱ekクロスEVカーオブザイヤー受賞

➡︎□日産サクラとリーフの間に新型マーチEVで復活?

➡□ミラージュとマーチがEV復活したら面白い 東洋経済

➡□期待できそうな電動ルノーカトル

➡︎□ルノーEV新会社への出資を日産三菱に依頼

➡□パジェロミニがBEVで復活?

➡□シルビアが電動化して復活?

➡︎□北極〜南極に向けて走るアリアのカスタムカー

➡︎□日産EVテクノロジーヴィジョン全固体電池による
長文ですが全部紹介します。
日経XTECH掲載の鶴原吉郎氏のコラムです。
日産自動車のEV(電気自動車)「アリア」は、どうも運が悪いというか、気の毒な感じがする。新開発のEV専用プラットフォーム「CMF-EV」を採用した新世代EV第1弾であり、2010年に「リーフ」を発売した、EVではパイオニア的な存在である同社が、満を持して投入した商品だけに、もっと脚光を浴びてもいいはずなのだが、残念ながらそうなっていない。

1つの理由は発売時期だ。アリアのコンセプトカーは、2019年秋に開催された「東京モーターショー」で公開され、市販モデルはほぼそのコンセプトカーのデザインのまま、2020年7月に発表された。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大や、半導体をはじめとするサプライチェーンの混乱で、実際の販売は当初の予定より大幅にずれ込んだ。2022年1月に予約注文限定モデルが発売されたものの、最初の市販モデルである「B6」が発売されたのは、2022年の5月になってからのことである。

折しも、2022年5月は、トヨタ自動車が2021年10月に詳細を発表した同社初の量産EV「bZ4X」を発売した月である(ただ、その後bZ4Xはホイールハブボルトのリコールで一時販売停止に追い込まれた)。さらに言えば、2022年5月は、日本に12年ぶりに再上陸した韓国Hyundai Motor(現代自動車)が、最新のEV「IONIQ 5」を発売したタイミングでもある。本来なら日産アリアは競合メーカーに先んじて市場に投入されるはずだった。それが結局、競合メーカーとほぼ同時のスタートになってしまい、結果として競合車の中で埋没してしまった。

もう1つ間が悪かったのが、身内にアリアよりもずっと注目されるEVが登場したことだ。その身内とは、三菱自動車の「eKクロスEV」と一緒に「2022−2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた軽自動車EVの「サクラ」のことである。偶然か、必然か、サクラも2022年5月に発表と同時に受注を開始したのだが、その後、発売から4カ月半で3万3000台を受注する大ヒット車になった。
こう言っては何だが、サクラは軽自動車「デイズ」のプラットフォームをほぼ流用して開発された、派生モデル的な成り立ちのクルマである(プラットフォーム開発時にEV化を考慮していたとはいえ)。にもかかわらず、専用プラットフォームを採用したアリアが、主役の座を奪われた格好になってしまった。発表から発売まで間が空いてしまったためか、2022−2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーにはノミネートすらされなかった。
このように、いろいろなめぐり合わせに翻弄された感じがするアリアだが、クルマそのものは決して悪くない。ショールームなどで見た時にはそれほど特徴のあるデザインに感じなかったのだが、あるとき、屋外に置いてあるアリアを見かけて、思わず立ち止まってしまった。こんなプロポーションのクルマ、見たことない、と感じたからだ。競合するトヨタのbZ4Xが、デザインのテイストとしては同じクラスの「RAV4」に近く、エンジン車と比較してもそれほど違和感がないのに対し、アリアはエンジン車とは明らかに異なるプロポーションである。何が違うかといえば、フロントノーズが非常に短いのだ。
フロントのタイヤハウス周囲のガーニッシュはフロントドアの前端ぎりぎりのところにあるし、フロントのオーバーハングは、同じクラスのFF(前部エンジン・前輪駆動)のエンジン車より明らかに短い。つまり、フロントドアよりも前の長さが同じクラスのエンジン車よりもだいぶ短いのである。これは、エンジンルーム(モータールームと呼ぶべきかもしれないが)を短縮できるEVの特徴を生かした結果であり、実際、アリアは同クラスのSUV(多目的スポーツ車)「エクストレイル」より全長が65mm短いにもかかわらず、ホイールベースは逆に70mm長いのである。室内長も、アリアは2075mmで、エクストレイルの1980mm(仕様により1990mm)より95mmも長い。

つまり、アリアはEVならではの特性を生かして、全長の割に広い室内空間を実現しているのだが、短いフロントノーズが寸詰まりに見えないのは、アーチを描くようなキャビンの形状や、前後のウインドーの角度などのバランスが良いからだろう。また内装の質感も非常に高い。今回試乗したB6グレードの内装色は明るいグレーで、シートは合成皮革とスエードの組み合わせであり、インストルメントパネルやドア内張りにも合成皮革が広くあしらわれ、500万円を超えるクルマらしい質感を表現できている。このあたりは、最大の競合車種であるbZ4Xを上回っていると感じた。

また、木目のような模様の上に図形が浮かび上がるスイッチ類は、ナチュラルさとハイテクをうまく融合して表現しており、新しさを感じる。物理ボタンの数を絞り込み、すっきりとシンプルな仕上がりの内装である。また前席はセンターコンソールがなく、足元が広々としているし、後席もフロアとの段差は自然で、“体育座り”を強いられることはない。
走り出してみると、発進はEVらしく静かでスムーズだ。踏み込めばEVらしい加速が得られるが、ことさらに出足を強調するような演出はない。またステアリングを切っていたときの特性も穏やかで、クルマの性格には合っていると思うが、あまりスポーティーな感じはしない。乗り心地は基本的には快適なのだが、高速道路の少し大きめな段差を乗り越えるとやや鋭い突き上げが、特にリアサスペンション周りから伝わってくる。ボディー剛性は全体としては高いのだが、リア周りは少し改善の余地があるかもしれない。
このように、アリアの走行性能は競合他社と比べて決して劣るところはないし、デザインや質感では上回っていると思う。ただし、アリアの発売タイミングが遅れたことで、最も運が悪かったと思うのは、アリアが発売されてから2カ月後の2022年7月に、新型エクストレイルが発売されたことだ。

EVの静かでスムーズという特徴は、e-POWER仕様のみとなったエクストレイルでも得られるようになってしまったし、予約受注車ではないアリアには現在のところ前輪駆動仕様しかないのに対して、エクストレイルは四輪電動駆動制御システム「e-4ORCE」を備えるAWD(全輪駆動)仕様がある。このe-4ORCEは、本来ならアリアが先に採用するはずだったが、結果としてエクストレイルに先を越されてしまった。
このため、e-4ORCEが実現しているステアリング操作に対するすばやい身のこなしを、アリアは現在のところ実現できていない。本来ならEVの強みである全開加速も、前後にモーターを積むエクストレイルには譲る。つまり、アリアの発売が遅れている間に、同じ日産の中でエクストレイルという強力なライバルが登場してしまったのである。EVの充電の不便さと、エクストレイルよりもざっと150万円高い価格を考えると、アリアの立ち位置はなかなか難しくなってしまったというのが筆者の正直な感想である。
➡︎□元記事に
凄いクルマなのにタイミングが悪い、不運、そういうクルマってあるものです。
今回新型プリウスが、ものすごい話題になっているのに対して、
日産アリアのプロモーションは、ことごとく失敗したと言えるでしょう。
公開が早すぎて発売まで間が空き過ぎてしまったのも失敗の要因です。
ここは日産割り切って、このクルマのために開発したモーターや電動パーツを
次なるクルマに応用してアリアを踏み石に、良いクルマの開発に活かしてほしいです。

➡︎□祝 日産サクラ三菱ekクロスEVカーオブザイヤー受賞

➡︎□日産サクラとリーフの間に新型マーチEVで復活?

➡□ミラージュとマーチがEV復活したら面白い 東洋経済

➡□期待できそうな電動ルノーカトル

➡︎□ルノーEV新会社への出資を日産三菱に依頼

➡□パジェロミニがBEVで復活?

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