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アウトランダーPHEV乗りのブログです(自称 発売以来PHEVを最も長く乗り続けている男の1人)

日経ビジネスが「三菱 文句のつけようがない好決算」とべた褒め

株式会社の成績表が決算報告書です。
時として決算報告が非常に興味深い時があります。
2022年の三菱自動車の決算は、日経の記者にとっても
大変素晴らしく見える報告者だった様です。



厳しい原材料価格高騰の中で、三菱自動車(以下三菱自)は増収増益の決算を発表した。好業績と言っていいだろう。これに伴い前期(22年3月期)および前々期(21年3月期)と2期連続で無配となっていた1株あたり配当も5円付いた。ちなみに今期(24年3月期)の見通しでは2倍の10円を予想している。

三菱自動車2022年度決算報告

 この連載を読む人にとって配当はおそらく興味の対象ではないと思うし、筆者もこれまで記事化した記憶がない。が、しかし、株式会社が無配というのは明らかに健康な姿ではない。三菱自が配当できる状態に戻したのは、今回の決算にとってもある種象徴的な出来事だと言える。
 さて、いつものごとく、主要な数字から見ていこう。
 販売台数(カッコ内は対22年3月期、以下同):83万4000台(89.0%)
 売上高:2兆4581億円(+4192億円)
 営業利益:1905億円(+1032億円)
 営業利益率:7.7%(+3.4ポイント)
 当期純利益:1687億円(+947億円)

 台数こそ11%ほどダウンしているが、その他は全てプラス。どこからも文句の付かない見事な数字である。となれば、その成績をどうやって達成できたのかが興味の対象になる。


 左端の柱が前期(22年3月期)、右端が当該期(23年3月期)の利益を示している。三菱の資料では「台数」と「MIX/売価」(構成)を別々に出してくれているのはありがたい。これで見ても分かるように、「台数」がマイナスであるにもかかわらず「MIX/売価」で大きくプラスに持っていっている。

 言うまでもなく、売り上げは、台数×単価で決まる。「MIX/売価」が良いということは単価が高いということで、一般的には、顧客に「より上の車種」、あるいは「同一車種でも高いグレード」が売れたことを意味する。モデルチェンジ、値上げなどもまた「MIX/売価」の要素である。
 普通に考えれば、商品に対する顧客の納得度が高いからこそ財布のひもが緩むのであり、評価の高い商品を造っている証拠の一つになる。自動車メーカーとしてこれはビジネスの源泉部分なので、「MIX/売価」での大幅な利益増は非常に喜ばしい事態である。
三菱自動車2022年度決算報告

 また「販売費」も利益貢献面でプラスになっており、これは販売店への販売奨励金を節減できたということを意味する。これは前回述べたとおり三菱自に限らない話だが、部品不足で需要に見合う生産ができなかった結果、値引きをする必要がなくなったことが大きいはずだ。
 「販売台数」はメーカーにとって大事な指標であり、多いに越したことはないのだが、多すぎて販売に困り、結果として販売奨励金を積み増すくらいなら、クルマが多少足りないくらいの方が、むしろ売り上げも利益も伸びる可能性があることを当該期の三菱自動車の決算は示唆している。

もちろん「売るクルマが足りない」ことがプラスに寄与するスイートスポットはそう大きくない。「僅かに足りない」ことがおそらく重要で、そのレベルを維持するオペレーションが意識的にできるかどうかはなかなか怪しいところではある。余談だが、常時意図的に「不足」状態をつくり出すビジネスを継続している自動車メーカーは実在する。フェラーリである。

 さて、当該期決算の重要なポイントである「原材料価格」の動向が分かるのが、「販売費」の右隣の「資材費/輸送費」の項目である。マイナス751億円は、前期の営業利益に肉薄する大きな金額ではあるが、今回は柱の右から2つ目、為替差益の方がもっと大きい(プラス999億円)。当該期の期内においては、「MIX/売価」と「為替」の2項目で上げたプラスで大きくお釣りが来る。内容としても厳しい中で「資材費低減」で、しっかり333億円押し戻すなど、ちゃんと戦うべきところでは戦っていることが見て取れる。

研究開発費をきちんと増額
 「資材費/輸送費」の隣にある「研究開発費」はマイナス165億円。地味だが、こうやって回復に持ち込んだ局面できちんと「研究開発費」を増額している(利益にはマイナス)ことも高く評価すべきだ。これまで述べてきたとおり、メーカーのビジネスの基礎は商品の魅力であり、未来の魅力ある商品をつくり出す力はこの「研究開発費」にひもづくからだ。

 少し乱暴な言い方をすると、この利益変動要因の表で、マイナスであることをポジティブに評価すべき唯一の項目が「研究開発費」、と言うことも可能だろう。ただし、規模や設備に対する適切な金額というものも存在するので、とにかく多ければ良いというものでもない。
 「その他」の詳細を個別に見よう。「国内子会社損益」は、資本が入っている販売店からの持分法規定分のプラスだと思われる。つまり魅力的なクルマの販売によって販売店でも利益が上がっていることの状況証拠と見ることができる。

 「アフターセールス損益」のプラスは、ディーラーでのアフターパーツ販売の利益と思われる。仮に「用途を満たせるクルマならばなんでもいい」という買い物であれば、顧客はアフターパーツに強く関心を持たないと考えられる。クルマを買う、あるいは点検などでサービス入庫した際に、アフターパーツの追加購入をしたくなるということは、それだけ商品に強い興味を持っていると見ることができるだろう。「品質関連費用 他」はいわゆるリコール対策費のこと。これがプラスに出ているということは、製品が前期比で安定し、不具合が発生しにくくなったことを意味する。

 なんというか、これだけ多くの指標がポジティブを示す決算も珍しい

 さて、この図の最後は「為替」だ。通貨別に見ると、タイバーツで負け越している以外は、全通貨で差益が出ている。為替は差益も差損もしょせんは運のもの。原則的には経営努力でどうこうなるものではない。特に対米ドル、豪ドルで大きいということは、レート差もさることながら、比較的売上高が大きいエリアで為替レートの幸運に恵まれたということになる。さて、では当該期のこの好成績を受けて、三菱自自身は今期(2024年3月期)の見通しをどう見ているかを見ていこう。
三菱自動車2022年度決算報告

 販売台数(カッコ内は対23年3月期、以下同):91万7000台(110.0%)
 売上高:2兆7000億円(+2419億円)
 営業利益:1500億円(-405億円)
 営業利益率:5.6%(-2.1ポイント)
 当期純利益:1000億円(-687億円)

 この数字から、三菱自がどう考えているかを想像していく。まず、現在の商品と追加リリースする商品に自信を持っており、台数を積み増していける、と考えている。それによって売上高が増大する。
 一方で、為替は当該期の極端な円安が是正方向へ動き、円高に振れる結果差損が発生する。これによって「営業利益」「利益率」「当期純利益」はダウンを見込んでいる。

 ではどの地域で販売台数の伸びを期待しているのか。10万台以上のマーケットで見てみると、ASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)と日本と北米である。中国は経済のファンダメンタルズを見ると期待しないのが妥当。北米もそういう節があるが、それを打ち消すだけの投入商品があれば、もともとの台数が大きくないだけにクリアできるかもしれない。


 個別の地域での計画はどうなっているかを見てみる。まずは日本だ。日本では登録車はマイナスだが、軽でプラスを見込む。当該期に売れたeKクロスEVに加えて、デリカミニの新車効果を見込んでいると思われる。この戦略に特に矛盾はない。
 ボリュームゾーンでもあり、最重要の中でも特に大事なASEANはどうか。23年から25年にかけての新商品投入マップを見渡してみると、現在タイで生産されているピックアップトラックのトライトンがフルモデルチェンジするのが大きい。併せて日本で一度生産中止になった軽商用EVのミニキャブMiEVがASEANで再投入される。確かにASEAN向けは充実している。

 残るは北米だが、ここの主役はおそらくアウトランダー。現地の充電事情に鑑みつつ、販売する全車の平均燃費を対象とする「CAFE規制」に対応するためにPHEV(プラグインハイブリッド車)モデルを追加する。またルノー日産との協業によるBEV(バッテリーEV)のほか、HEV(ハイブリッド車)の投入も計画されているようなので、計画との大きな矛盾は感じない。
三菱自動車2022年度決算報告

 ということで、総評を。三菱自動車は厳しい時期を脱したが、現状ではまだまだ商品バリエーションの層が薄く、1車種ごとへの依存率が高いところが気がかりだ。しかし事業計画的には、まさにそこへ投入する新型車が用意されており、それらの投入、販売がうまくいけば当面順調な成長が望めそうに見える
 もちろん景気も経済も水物なので、常に上振れ、下振れのリスクはある。ただ少なくとも三菱自動車側の構えはかなり良い形になった、と言えそうだ。

➡□元記事に



文句のつけようのない決算との事ですが、
素人目から見ても決算報告に企業の活動が出てしまうので
「非常に怖いな」そして「ある意味では面白いな」と思いました。
 ⇒以下は小生の考察です。

①大幅に増収増益となったのですが、
 売上アップは台数減、逆に高い車が売れたのでアップになったとの事です。
 ⇒これは三菱空前の高級車アウトランダーPHEV効果や、軽のekクロスEVシフト、
  アセアンで売れた車(エクスパンダー)の単価アップ等が想像できます。
②販促費の削減で利益貢献
 ⇒上記の人気車は、安売りしないでも売れるので売値あたりの値引き額が
  少なく済みます。
  銘柄を指定して買われる方が多いので、過去の値引き合戦から脱した様ですね。
③為替が大きく利益に貢献
 ⇒三菱は今回輸出時の為替で大きく利益を出しました。
  原材料では円安がマイナスに働きましたが、北米への輸出などで
  大幅にこれを上回る為替差利益を出しています。流石グローバル企業です。
④地味だが出た利益を研究開発費の積み増しに回している。
 ⇒将来の電動車両の開発に回しているのは期待できますね!。
⑤国内子会社損益もプラス。ディラー販売店も利益が出ている。
 ⇒アウトランダーPHEVが売れる方が、軽自動車を売るよりディラーさんは
  どう考えても儲かっている様に思います。救世主ですね。
⑥アフターセールス損益もプラス。ディラーのアフターパーツセールスもプラス。
 ⇒これもアウトランダーPHEV効果ではないかと思われます。
  人気車の方がオプションも売れるのは当然です。
  三菱純正アウトドアグッズなどを強化した事も功を奏したかも。
⑦結果 これだけ多くの指標がポジティブを示す決算も珍しい。という記者のコメントに繋がっています。

⑧2023年度も中国の事業の厳しさはあるものの、
 日本へデリカミニ、アセアンに新型トライトン、北米にアウトランダーPHEV
 が投入されるので事業利益の拡大が期待されるとの事
 ⇒増配も続けられるといいですね。

一番厳しい時を脱したかに見える三菱、結局お客様が乗りたくなる
良いクルマを誠実に作ることが事業利益につながる様に思います。
是非頑張って欲しいものです。



三菱自動車 2023年3月 2022年度決算報告

➡︎□三菱決算第一報、中国のアウトランダー生産停止の特損を売上でカバー



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