
従来の定説は、床を低くして室内の広さを確保しなければならない
ミニバンには床下に電池を収める必要のある電動車両は
向かないという事でした。(価格が高くなりすぎるという点も)
デリカD:5にPHEVがないのもその理由です。
しかしここに来て、非常に大型の高級ミニバンが続々中国から
発売されて来ます。
多くは電動車両なのでこの定説はもはや覆されるかもしれません。
広州汽車が「トランプチ」ブランドからリリースするミニバン「E9」に試乗しました。
中国でも人気が高まっているミニバン市場ですが、そのなかのE9とはどのようなモデルなのでしょうか。

トランプチに聞き馴染みのない人は多いかもしれません。
このブランドは中国の国営自動車メーカーのひとつ「広州汽車」が2010年に立ち上げた乗用車ブランドです。
広州汽車自体は2022年に全世界で計243万台を販売し、中国国内の自動車メーカー単独としては3位の規模を誇ります。「トランプチ」以外にも、電動ブランドの「アイオン」や「ハイカン」などを取り揃えています。
また、広州汽車は日本メーカーとも積極的に提携しています。
トヨタとホンダとは合弁会社「広汽トヨタ」「広汽ホンダ」をそれぞれ設立しており、中国国内で各モデルの販売と製造をおこなっています。
それに加え、トランプチの一部ハイブリッド車種にはトヨタより供給を受けた「THS-II」が採用されているなど、数多くある中国メーカーの中でもひときわ日本メーカーとの関係が深い会社となります。
トランプチのラインナップはセダンの「GAシリーズ」、SUVの「GSシリーズ」、ミニバンの「Mシリーズ」、スポーティーな「影シリーズ」で構成されています。
それらに加え、2023年4月の上海モーターショー2023では新たに「Eシリーズ」をローンチしました。
名前からもわかる通り、電動車に注力している新たなラインナップは広州汽車が打ち出す「2025年までに全車種電動化」の計画を支える根幹となります。
そのEシリーズにおける第一弾車種が、今回試乗したPHEVミニバン「E9」です。
2022年に登場したフラッグシップミニバン「M8」の2代目モデルをベースとするPHEVで、基本的な寸法やベースのデザインはベース車と同一です。
EシリーズではE9以外に、ミニバン「M7」をベースとする「E8」や、SUV「GS8」がベースの「ES9」を2023年中にリリースすると見られます。
E9のボディサイズは全長5193mm×全幅1893mm×全高1823mm、ホイールベースが3070mm。
2023年6月に発表された4代目トヨタ アルファードが全長4995mm×全幅1850mm×全高1945mm、ホイールベース3000mmなので、それよりも大きいサイズ感を誇ります。
パワートレインは広州汽車のハイブリッド用エンジンである4B20J2型2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンをベースに、フロントに出力134 kW(179 hp)の電動モーター、2速DHT(ハイブリッド専用トランスミッション)を組み合わせたものになります。
特筆すべきはそのエンジンで、4B20J2エンジンは単体で出力187 hp、トルク330 Nmを誇るユニットでありながら、熱効率は40.23%を達成したことでも話題を呼びました。
広州汽車は電気自動車(BEV)のみならず、HEVやPHEVといったハイブリッド車種にも力を入れており、それを支える高熱効率型エンジンも積極的に開発しています。
PHEVですから、当然駆動用バッテリーも重要となってきます。
バッテリー容量は25.57 kWhの一種類のみを用意しており、これによりWLTC純電動航続距離は106km、WLTC総合航続距離は1032kmを実現しました。
バッテリー自体はオーソドックスな三元系リチウムイオン電池となりますが、設計は広州汽車独自の「マガジンバッテリー」と呼ばれるもので、銃器の弾倉形状になったバッテリーセルが特徴となります。
このセルを横向き・縦置きに並べてひとつのバッテリーパックを構成することで、安全性の向上を実現したとしています。

インテリアは3列・7人乗りながらもとても広々としており、窮屈さは感じさせません。
フロントには14.6インチディスプレイを備えるほか、上位グレードでは助手席用12.3インチディスプレイに加え、2列目用の15.6インチルーフディスプレイも装備。
それぞれのディスプレイで異なる操作がおこなえるのを特徴としており、中国の消費者層がいかにインフォテインメントを重視するかが、ここから伺えます。
サウンドシステムにはヤマハ製のものを採用しており、下位グレードでは12スピーカー、上位グレードでは16スピーカーの構成になります。
重心が高いミニバンではありますが、運転のしづらさは実際の試乗で感じませんでした。
乗り味は非常に安定しており、またそれは後部座席に座った際も同じなので、足回りの設計は優秀であるという印象を受けました。
また、PHEVなので程よく力強い加速感があるのも良い点です。
2列目の左右独立型キャプテンシートではパワシートに加えてマッサージ機能も搭載しており、その操作はアームレスト先端にあるタッチパネルでおこなう形です。
ですが、そのタッチパネルの解像度自体はあまり高くなく、こういった点でコストダウンを図っているのだと感じました。
ただ、操作性には問題なく、複数パターン用意されているマッサージにはとても癒されました。
後部座席のインフォテインメントをつかさどるルーフディスプレイに関しては、そのGUI(グラフィックユーザインタフェース)がトランプチの下位車種と同じなのが少し気になりました。

同様の大型ミニバンであるジーリーの「ジーカー 009」ではジーカーブランド専用GUIやフォント、グラフィックを採用しており、「ジーカーだけの特別感」を上手に演出していました。
対してトランプチ E9ではフラッグシップモデルであるものの、より小型で下位に位置するモデルとその部分が同じです。
もちろんジーカー 009とは価格帯がまったく異なることを考慮する必要がありますが、それでもこの安っぽいGUIは洗練された外装デザインと少々ミスマッチであると感じました。
グレード形態は「PRO」「冠軍版」「MAX」「宗師」の全部で4つとなります。
「マスター・エディション」とも称される「宗師」では専用のフロントマスクを採用しており、運転支援技術や快適装備もふんだんに盛り込まれています。
中国での販売価格はそれぞれ32万9800元(邦貨換算:約662万1000円)、34万9800元(約702万2000円)、36万9800元(約742万3000円)、そして38万9800元(約782万5000円)となります。
これだけの装備と走行性能を兼ね備えたミニバンとしては安価な部類に入りますので、市場における人気も理解できます。
中国では大型ミニバンへの需要が高まっており、各メーカーともに新たなミニバンを続々と投入しています。
広州汽車のフラッグシップミニバン「M8」も以前より存在していたモデルですが、ここ数年のブームを受けて外装デザインと性能を大幅に刷新させました。
また、電動化の流れに追随するべく投入されたこの「E9」も、広州汽車の電動化計画における重要な役割を担っています。

中国メーカーが新たにリリースするミニバンは、そのほとんどがPHEVかBEVといったEVになります。
トヨタも新型アルファード/ヴェルファイアにPHEVモデルを投入すると予告しており、中国での販売には大きな期待が寄せられることでしょう。
➡︎□元記事に
かなりデザインはトヨタ車のパクリ感があるのですが、
それでも航続距離1000kmを超えるPHEVを世界に先駆けて
発売してきてしまうのが今の中国自動車メーカーの技術力の高さを
物語ります。
広州汽車以外にも

一汽奔騰(Bestune)の「奔騰 M9」MPV

東風汽車のヴォヤー ドリーマー(BEV)
等、大型の電動ミニバン、MPVが続々登場してきます。
かなりデザインはパクリ感のあるものも見受けられます。
それでも
日本メーカーが、車両重量が重くなりすぎる、もしくは
大型バッテリーを積み込むと販売価格が高くなりすぎる
懸念からグズグズするうちに中国から電動ミニバンが
お構いなしにガンガン発売されてきます。
今の電動車両のトレンドが、中国から起きてしまっている事が
改めて思い知らされる現実です。

➡︎◻︎トヨタ ヴェルファイアPHEV登場?

➡︎◻︎トヨタ センチュリー3.5ℓPHEV

➡︎◻︎トヨタ エスティマ電動化されて復活か?

➡︎◻︎日産タウンスターEVパッセンジャー欧州用

➡□トヨタ電動ハイエース登場近い?

➡□日産は次世代の超低床が実現する電動プラットフォームを示唆

➡︎□VWのマルチバンは素敵な電動商用車

➡︎□米リヴィアン Amazonから10万台受注

➡︎□米カヌーのピックアップトラック

➡︎□米ウーバーのEV

➡︎◻︎プジョーのEV商用車 e-Expert

➡︎□ミニバンにPHEVが無い理由
ミニバンには床下に電池を収める必要のある電動車両は
向かないという事でした。(価格が高くなりすぎるという点も)
デリカD:5にPHEVがないのもその理由です。
しかしここに来て、非常に大型の高級ミニバンが続々中国から
発売されて来ます。
多くは電動車両なのでこの定説はもはや覆されるかもしれません。
広州汽車が「トランプチ」ブランドからリリースするミニバン「E9」に試乗しました。
中国でも人気が高まっているミニバン市場ですが、そのなかのE9とはどのようなモデルなのでしょうか。

トランプチに聞き馴染みのない人は多いかもしれません。
このブランドは中国の国営自動車メーカーのひとつ「広州汽車」が2010年に立ち上げた乗用車ブランドです。
広州汽車自体は2022年に全世界で計243万台を販売し、中国国内の自動車メーカー単独としては3位の規模を誇ります。「トランプチ」以外にも、電動ブランドの「アイオン」や「ハイカン」などを取り揃えています。
また、広州汽車は日本メーカーとも積極的に提携しています。
トヨタとホンダとは合弁会社「広汽トヨタ」「広汽ホンダ」をそれぞれ設立しており、中国国内で各モデルの販売と製造をおこなっています。
それに加え、トランプチの一部ハイブリッド車種にはトヨタより供給を受けた「THS-II」が採用されているなど、数多くある中国メーカーの中でもひときわ日本メーカーとの関係が深い会社となります。
トランプチのラインナップはセダンの「GAシリーズ」、SUVの「GSシリーズ」、ミニバンの「Mシリーズ」、スポーティーな「影シリーズ」で構成されています。
それらに加え、2023年4月の上海モーターショー2023では新たに「Eシリーズ」をローンチしました。
名前からもわかる通り、電動車に注力している新たなラインナップは広州汽車が打ち出す「2025年までに全車種電動化」の計画を支える根幹となります。
そのEシリーズにおける第一弾車種が、今回試乗したPHEVミニバン「E9」です。
2022年に登場したフラッグシップミニバン「M8」の2代目モデルをベースとするPHEVで、基本的な寸法やベースのデザインはベース車と同一です。
EシリーズではE9以外に、ミニバン「M7」をベースとする「E8」や、SUV「GS8」がベースの「ES9」を2023年中にリリースすると見られます。
E9のボディサイズは全長5193mm×全幅1893mm×全高1823mm、ホイールベースが3070mm。
2023年6月に発表された4代目トヨタ アルファードが全長4995mm×全幅1850mm×全高1945mm、ホイールベース3000mmなので、それよりも大きいサイズ感を誇ります。
パワートレインは広州汽車のハイブリッド用エンジンである4B20J2型2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンをベースに、フロントに出力134 kW(179 hp)の電動モーター、2速DHT(ハイブリッド専用トランスミッション)を組み合わせたものになります。
特筆すべきはそのエンジンで、4B20J2エンジンは単体で出力187 hp、トルク330 Nmを誇るユニットでありながら、熱効率は40.23%を達成したことでも話題を呼びました。
広州汽車は電気自動車(BEV)のみならず、HEVやPHEVといったハイブリッド車種にも力を入れており、それを支える高熱効率型エンジンも積極的に開発しています。
PHEVですから、当然駆動用バッテリーも重要となってきます。
バッテリー容量は25.57 kWhの一種類のみを用意しており、これによりWLTC純電動航続距離は106km、WLTC総合航続距離は1032kmを実現しました。
バッテリー自体はオーソドックスな三元系リチウムイオン電池となりますが、設計は広州汽車独自の「マガジンバッテリー」と呼ばれるもので、銃器の弾倉形状になったバッテリーセルが特徴となります。
このセルを横向き・縦置きに並べてひとつのバッテリーパックを構成することで、安全性の向上を実現したとしています。

インテリアは3列・7人乗りながらもとても広々としており、窮屈さは感じさせません。
フロントには14.6インチディスプレイを備えるほか、上位グレードでは助手席用12.3インチディスプレイに加え、2列目用の15.6インチルーフディスプレイも装備。
それぞれのディスプレイで異なる操作がおこなえるのを特徴としており、中国の消費者層がいかにインフォテインメントを重視するかが、ここから伺えます。
サウンドシステムにはヤマハ製のものを採用しており、下位グレードでは12スピーカー、上位グレードでは16スピーカーの構成になります。
重心が高いミニバンではありますが、運転のしづらさは実際の試乗で感じませんでした。
乗り味は非常に安定しており、またそれは後部座席に座った際も同じなので、足回りの設計は優秀であるという印象を受けました。
また、PHEVなので程よく力強い加速感があるのも良い点です。
2列目の左右独立型キャプテンシートではパワシートに加えてマッサージ機能も搭載しており、その操作はアームレスト先端にあるタッチパネルでおこなう形です。
ですが、そのタッチパネルの解像度自体はあまり高くなく、こういった点でコストダウンを図っているのだと感じました。
ただ、操作性には問題なく、複数パターン用意されているマッサージにはとても癒されました。
後部座席のインフォテインメントをつかさどるルーフディスプレイに関しては、そのGUI(グラフィックユーザインタフェース)がトランプチの下位車種と同じなのが少し気になりました。

同様の大型ミニバンであるジーリーの「ジーカー 009」ではジーカーブランド専用GUIやフォント、グラフィックを採用しており、「ジーカーだけの特別感」を上手に演出していました。
対してトランプチ E9ではフラッグシップモデルであるものの、より小型で下位に位置するモデルとその部分が同じです。
もちろんジーカー 009とは価格帯がまったく異なることを考慮する必要がありますが、それでもこの安っぽいGUIは洗練された外装デザインと少々ミスマッチであると感じました。
グレード形態は「PRO」「冠軍版」「MAX」「宗師」の全部で4つとなります。
「マスター・エディション」とも称される「宗師」では専用のフロントマスクを採用しており、運転支援技術や快適装備もふんだんに盛り込まれています。
中国での販売価格はそれぞれ32万9800元(邦貨換算:約662万1000円)、34万9800元(約702万2000円)、36万9800元(約742万3000円)、そして38万9800元(約782万5000円)となります。
これだけの装備と走行性能を兼ね備えたミニバンとしては安価な部類に入りますので、市場における人気も理解できます。
中国では大型ミニバンへの需要が高まっており、各メーカーともに新たなミニバンを続々と投入しています。
広州汽車のフラッグシップミニバン「M8」も以前より存在していたモデルですが、ここ数年のブームを受けて外装デザインと性能を大幅に刷新させました。
また、電動化の流れに追随するべく投入されたこの「E9」も、広州汽車の電動化計画における重要な役割を担っています。

中国メーカーが新たにリリースするミニバンは、そのほとんどがPHEVかBEVといったEVになります。
トヨタも新型アルファード/ヴェルファイアにPHEVモデルを投入すると予告しており、中国での販売には大きな期待が寄せられることでしょう。
➡︎□元記事に
かなりデザインはトヨタ車のパクリ感があるのですが、
それでも航続距離1000kmを超えるPHEVを世界に先駆けて
発売してきてしまうのが今の中国自動車メーカーの技術力の高さを
物語ります。
広州汽車以外にも

一汽奔騰(Bestune)の「奔騰 M9」MPV

東風汽車のヴォヤー ドリーマー(BEV)
等、大型の電動ミニバン、MPVが続々登場してきます。
かなりデザインはパクリ感のあるものも見受けられます。
それでも
日本メーカーが、車両重量が重くなりすぎる、もしくは
大型バッテリーを積み込むと販売価格が高くなりすぎる
懸念からグズグズするうちに中国から電動ミニバンが
お構いなしにガンガン発売されてきます。
今の電動車両のトレンドが、中国から起きてしまっている事が
改めて思い知らされる現実です。

➡︎◻︎トヨタ ヴェルファイアPHEV登場?

➡︎◻︎トヨタ センチュリー3.5ℓPHEV

➡︎◻︎トヨタ エスティマ電動化されて復活か?

➡︎◻︎日産タウンスターEVパッセンジャー欧州用

➡□トヨタ電動ハイエース登場近い?

➡□日産は次世代の超低床が実現する電動プラットフォームを示唆

➡︎□VWのマルチバンは素敵な電動商用車

➡︎□米リヴィアン Amazonから10万台受注

➡︎□米カヌーのピックアップトラック

➡︎□米ウーバーのEV

➡︎◻︎プジョーのEV商用車 e-Expert

➡︎□ミニバンにPHEVが無い理由
- 関連記事
-
-
トヨタがEV開発加速…組み立て中の車両が自走、航続距離は1000キロに倍増 2023/10/03
-
来春デビュー!? 最強の「GRMN プリウス」 ハイパワーPHEVトレンド勃発か? 2023/10/01
-
衝撃!デトロイトモーターショーにBEVの新車なし!? 2023/09/29
-
PHEVミニバンの流れは中国から?広州汽車のアルファードより大きいPHEV登場 2023/09/26
-
EV充電インフラ強化へ 2030年までの設置目標30万口 2023/09/25
-
新型センチュリー発表会に展示は、今後予定の「ヴェルファイア PHEV」か?! 2023/09/24
-
電動車両乗りを、複雑な心境にさせる衝撃の光景「中国EV墓場」 2023/09/22
-


